本作は氷の表層を捉えたものだ。
水は無色透明であるが、凍結することによりそれは可視化されていく。
純度の高い氷はより深くまで透き通り、ゆっくりと闇に溶け込こむ、そこに亀裂が入る事で光の乱反射が生まれ、様々な表情がみえてくるのだ。
そんな氷の集合体だが、遠近感をなくし構成した写真群はどこか人間の細胞に類似してみえる。
この不思議な繋がりについて考えてみると、まず人体は約70%が水分で構成されており、それを媒体とし細胞組織が作られている。
体液は、細胞間を巡り内臓や骨を作る手助けをしたり、血液として体内を循環して、様々なものに変化し生命を維持している。
自然もまた、海水が地球上を循環する事により熱や物質が移動し、様々な生態系を保っている。
地球という生命体も同様に水が重要な構成物質なのだ。
サイズ感の違う人間と地球だが、水を共通とし、そこから形成されるものが類似してくるのは、人間が地球の一部である事を認識させる。
脳の神経細胞が、宇宙の銀河に似ているという話があるが、それもまた宇宙に存在する生命体の一部と考えるとどこか腑に落ちる。
一見関係のないものが繋がっていくこの感覚を味わいながら、まだ見たことのない事象を想像していくのである。
田口純也